5月公演あれこれ

人形。自分、結構つまんないことも観てます。人間のお芝居と違って「どれだけ人形を繊細に遣ってるか」「どれだけ遣う人の存在を消しているか」の方が「どれだけ人形遣いが目立つか」より気になるもので。人形遣いさんが気張って似合う人もいるので(先代の勘十郎さんとか、文吾さんとか、今だと玉也さんかな)、いいとか悪いとかいう問題でなく。

  • 勘緑さんが碁を打つ手が「いかにも碁石を置いている」感じできれいでした。勘緑さんは手の(人形の)動きにめりはりがあるからデフォルメした人形がお得意だけど、こういう役でも手の動きが決まるといい感じですね。
  • 大膳の部下3人がそれぞれ違うので面白ポイントでした。文哉さんは前かがみで首を斜めにかまえてちょっとヤクザさん風。紋秀さんはちょっと他人事みたいに適当に聞き流してるビジネスマン風、簑紫郎さんは隅にいますけどちゃんと聞いてますよという級長さん風。
  • 龍なんですか?あれはホントに龍なの?ちょっと違うモノに見えませんでした?たとえば阪神の試合で7回に空に飛んでいくあれ、みたいじゃなかったですか?(席が遠かったのでよく見えなかったんですけどね)
  • モノを竹にくくって下ろすわけじゃないので、あっさりぽーんと投げちゃうのはなにか、こう・・・
  • 確か「絵本太功記」でも超優勢の千なりびょうたんは余裕を持って「では後ほどあらためて」と言ってますよね。「スポーツマンシップ」と感じるか「イヤミなヤローだな」と感じるか、それは受け取り手の自由なんざんしょ〜か。大膳のいる部屋はなんですかね、地下にシェルター〜地下道があって籠城もしくは逃げられる?とか、ヒコーキみたいに床ごとジャンプしてパラシュート脱出できる?とか工夫があるんですよね?それじゃないとあのまま動物園に連れていかれちゃうものね。
  • どじょうが証文を取っていくとき、落ちないように工夫があるんでしょうか?先っちょに粘着物質がついてるとか?
  • 「碁太平記」は惣六が大好きです。彼の噺にうんうんと頷きながら聴き入ってしまうのですが、その中でも「息子が女形狂いなんかしたら叱りとばすだろうに、よそ様が遊んでくれたら褒める自分」を冷静に見ている部分がすごく好きです。自分だってまっとうなことはしてないよ、人間なんて皆みんな矛盾ばっかりで、でもきれいこと言ってたら食っていけないんだよ、という・・・すっごく人間っぽいでしょ。この人に諭されたら言うことききますよね。文司さんがまた、なんだか師匠に似てオトコマエに遣ってますよね。
  • 「景事」ってきれいなイメージがあって、前に見た「連獅子」は荘厳な感じがしたのですが、今回のはちょっとドタバタしていた気がします。最初に観たときは「こんなだったかなあ」と思っただけでしたが、後半の勘弥さんの人形を拝見して「そうそう、こういうイメージだった」と確信しました。
  • うまく表現できないですが…荒ぶった遣いの大きな人形、は雑な人形とは違うと思います。「荒振る←玉也さんとか」と「荒い」は別物というか…身体が斜めに傾いていたり、人形でなく人形遣いが大袈裟に動いたりすると人形がブレて雑だなあ、という印象を受けます。
  • 前にも書きましたが、2部は「油屋」が一番面白かったです。咲さんが絶好調という感じで燕三さんもいつも通り手堅く(三味線さん、全体に安定してますよね)、人形も多くてにぎやかで。前に観たときも勘六と小助は玉也さん&勘十郎さんだったと思いますが、お二人の持ち味がとてもよく出ていてはまり役だと思いました。勘十郎さん以外で小助をやることがあったら勘緑さんプリーズ(笑)・・・って書いたら「近頃河原達引」が観たくなった!!
  • 勘六とお庄のところで泣けるんですけど「彫りどころが悪くて片手でしか拝めない」というくだりはホントに泣き笑い。懐の深いお庄にしてこの息子あり、って気がします。お庄が和生さんなので、前に観た文司さんより柔らかめでした。
  • 前後しますが「野崎村」。紋壽さんのお染は私は初見だと思います。遣う人でやっぱり全然違うんだな、というのが一番大きな収穫でした。紋壽さんは「お福ちゃん」を持たせたら誰もかなわないと思うくらい優しい人形を遣われると思うのですが、それがお染にもはっきり出ている気がしました。お染って今まで「所詮奉公人の久松が自分に逆らえるはずはない」と思ってるんじゃないかという印象があってそれがイヤだったんですけど、そういうのは全然なかったです。それでも「野崎村」はおみつが可哀想すぎてダメですけど・・・
  • 「団子売」・・・実はお臼に期待して観たのですが、どちらかというと杵造がよかったです。サロンに参加したのでつい幸助さんにひいき目に、というわけではないですが(笑)。でもこれ、一輔さんも杵造の方が似合いそうだな〜、と思いません?

はまり役と言えば「夏祭」の義平次は玉也さんだとばかり思っていましたが玉女さんなんですね。文楽劇場と国立で2回観ていますが、どちらも玉也さんの義平次だったんです。でも一寸徳兵衛も似合いそう。玉女さんは「国言詢音頭」の八柴初右衛門も「加賀見山旧錦絵」の岩藤もよかったので(どちらも妙に嬉しそうだった気が・・・)義平次もいけるかも。