文楽のせいかもしれない

最近、能を観ていると女性の役なのに「男にしか見えない」と思ってしまうことが増えました。もちろんちゃんと女性に見える人も多いです。装束と面を取ったらとっても男らしい方なのがわかっていても女性を演じたら女性にしか見えない人もいます。いわゆる「上手」というおシテさんですね。
それってだんだん自分の目が肥えたせいかしら、とか思っていたんですけど、よく考えたら文楽のせいなのかもしません。人形は遣い方とは関係なく男女がはっきりわかりますよね。女性は絶対に女性のビジュアルですし、しかも女性らしく遣うでしょう？でも能のシテは身体の線が出ないようにしたり、ビジュアル的な性別を露骨には出さないんです。歌舞伎の女形のように女性っぽく演じたりはしないですし、そこで「男にしか見えない」場合が生じるのではなかろうか、と。
視点を変えてみると、たとえば絶好調の時のトモエダアキヨさんの舞なんて神様が遣っている人形みたいに男女以前にヒトを超越した美しさがあります。人が「面」をかけても誰でもが「人形」のようになれるわけではないんだ、と思うこの頃・・・え？当たり前ですか？(苦笑)