文楽人形音楽劇『池鯉鮒る魂』

知立の公演で拝見して、詳しく書いておきたいと思いながらなかなか時間が取れなくて遅くなってしまいました。

  • 【脚本・演出・人形】吉田勘緑
  • 【作曲】羽田康次
  • 【登場人物】
    • 人形:人形浄瑠璃文楽
    • 演奏:和太鼓ユニット『光』
    • 父:羽田康次
    • 母:はだひかる
    • 語り手:加藤万里子
    • 片目の鯉・狐(初蓮):こつじまさのり(人形劇団むすび座)
      • 「片目の鯉」:知立神社の御手洗池にいる鯉。明神さんのお使いで、目の見えない娘に片目をあげたといわれています。
      • 狐「恩田の初蓮」:恩田の松雲院の裏山に住む、子狐を可愛がっている白い狐。化けるのが得意。刈谷のお城のお殿様をだましたことで松雲院の和尚さんの怒りにあって箱根の山へ行ってしまいますが、後に再び恩田へもどったといわれています。

どこの郷土芸能を拝見してもたいてい「太鼓」があります。太鼓の音はきっと、どんな人の原風景にも存在すると思います。母の胎内で聴いた心音かもしれないし、己の鼓動かもしれません。その太鼓の音に乗って人形芝居が進むというのでとても楽しみにしていました。勉強不足で着いてから知りましたが、この作品の基になってるのはパティオのある知立の民話「八橋」だそうで、最後は「ふるさとへ帰ろう」という皆の歌声で終わります。
昔話の中に自然破壊に対する警鐘がこめられていたり医師の死が過労死であったり、現代風なテイストでもありました。

「八橋」の地名のおこり:昔、羽田玄庵という医師が荘司の娘である妻と2人の男の子と暮らしていましたが、若くして亡くなってしまいました。貧しい中、2人の子を育てるために母は木を拾ったり浦(今の逢妻川)で海苔をとったりして生活していたのですが、あるとき海苔をとりに行った母を追って川にきた息子たちは母のもとへ行こうとして川に流されてしまいます。嘆き悲しんだ母は髪をおろして師孝尼という尼になり子供の菩提を弔う毎日でありましたが、もし川に橋があれば子供たちはおぼれなかったろうと思い、観音さまのご神託で得た材木で橋をかけることに。川が入り組んでいてひとつの橋にすることは無理で互い違いにかけた橋が八つ、それでこの地を「八橋」といいます。

「ふるさと」って誰にでもありますよね。でも「ふるさと」ってなんだろう?生まれた土地だとは限らないと思います。ふと立ち寄った見知らぬ土地の風景がひどく懐かしく思えることも、きっと誰もが体験していることだと思います。そんな、心の奥底にある「ふるさと」のことを考えながら帰りの電車に揺られていました。

そういうことをもっとたくさんの場所でデジャヴみたいに体験したい、そう思っています。ちなみに私は神奈川県で生まれ育ちましたが地元のことを何にも知りません。人形芝居も毎年一堂に集っての公演がありますが、チケットが手に入りません(抽選)。もっとチャンスを逃さないようにしないと、と思っています。