初春公演

今回は1回しか観なかったので「第一印象」だけです。痛感したのは入れ替えのあとでよかったな、ということですね。前の日から大阪入りしてぐっすり眠って体力も気力も十分なときに重たいものを先に観られたので気分的に楽でしたし集中できました。逆だったら重くて消化不良になったと思います。

  • 「新版歌祭門」座摩社の段:えーとですね・・・特になし(苦笑)。楽前日ということで皆さんこなれていてどこと言って難はなかったです。でも、特に気合が感じられたわけでもなくて「無難」ってやつですかね。実を言うと、こういう段の大阪での公演って最後の方はいつもこんな感じがするんです。気楽に遣っているというのか安心しきっているというのか。それがイヤだというわけじゃないです。大阪でしか味わえないので、これはこれで好きっちゃ〜好きです。私のメイン観劇が「能」で、あれは常に「一回勝負の公演」ですから物足りなく思っちゃうのかもしれません。
  • 野崎村の段:よいですね〜、4月に「寿式三番叟」にご出演の4人が全員揃いました。それを簑助師匠の十八番のおみっちゃんが〆ていて隙のない舞台だったと思います。やっぱり〆る人が必要なのかなあ。駕籠屋が豪華でしたねえ。普段はどうしても船頭の方を観ちゃうんですけど、駕籠屋さんを観ちゃいましたわ〜。こんなに「人形じゃなくて人形遣いさんを観た」のは初めてかもしれません(笑)。こういう風に格にあわないお役をされるものまた楽しいものですね。このお二人で「二人禿」をやってほしいなあ。
  • 油屋の段:実は勘違いをしていまして録画で観たのは油屋ではなかったです。「妹背門松」とごっちゃになっていました。と言うわけで「油屋」は初見です。玉也さんの勘六が圧巻ですね。いいなあ、ホントにいいなあ、大きいなあ!って思いました。お勝さんって頭はいいし策士だし、男に生まれていたら一代で財を成しただろうと思わせます。そういうのは「野崎村」だけじゃわからないですよね。ホントに子育てとか興味なさそうですよね。産むだけ産んで下女に任せっぱなしで。だから「世界は自分を中心に回ってる」と信じてる娘が育ったんだろうと納得できました。きれいな娘はアクセサリーのひとつくらいにしか思ってないんじゃないのかな。
  • 床ですが・・・皆さま思われたと思うのですが「油屋の段・中」が文字久さんでなかったのがヒッジョーに残念でした。「久様」と語る文字久さんを拝見したかったです!早くよくなって帰ってきてくださいね。
  • 花競四季寿:前回同様「関寺小町」が完全に「人」に見えました。リアリズムっていうんでしょうか、すごい迫力。「海女」のときの軽快な雰囲気とうってかわったどっしり感でした。この演目って四季をつなぐ部分の床がいいですよね。小さなボートで海に浮かんでるみたいな、ゆすられてるみたいな感じ、気持ちいいです。「鷺娘」についてはしつこくなるので書きませんが、お人形に会ったときに心の中で「ありがとう、貴女のおかげ」って頭を下げました。彼女との出会いがなければ文楽を観続けることはなかったと思いますので。
  • 「増補忠臣蔵」本蔵下屋敷の段:今回のマイベスト演目。嗚咽寸前でしたから。こんなこと言ってくれる上司がいますか、今の世の中・・・。人として生まれてきた以上、忠義に勝るものはありません!二世より三世です!自分が何か役をできるのなら巴御前をやりたいと思ってます(笑)。ちょっと身体を傾けて三千歳姫のお琴に聴き入る若狭之助は優しげで、めっちゃいい男でした。
  • 曲輪文章・吉田屋:ん〜〜〜と、正直に書きますが期待はずれでした。床はよかったです。それぞれの人形も申し分ないです。でも床と人形が微妙にあっていませんでした。悲しい話なのにお客さん爆笑・・・なぜ???もしかしたらそういう演出の演目なのかもしれませんが、だとしたら「また観たい」とは思いません。素浄瑠璃でいいです。