年輪

テノール歌手のホセ・カレーラス氏は今年、デビュー50周年。プログラムの中のインタビューで氏は「テクニックは表現を助けるためのものであって、テクニックのために表現がおざなりにされてはならない」「素晴らしいテクニックであればあるほど、それをテクニックと意識させることはない」と話しておられます。彼は非常に高度なテクニックを持っていながら「歌手にとって一番大事なのは『表現』だ」と言うのです。
それを読んで「そうだ、だから能楽師さんにしても技芸員さんにしても、一流の人というのは年齢を重ねることで出てくるかけがえのないものをお持ちなのだ」と改めて思いました。言葉の奥にあるもの、演じる方の人生の投じられた表現を受け取れる感性を持ちたい、観る者・聴く者として常に謙虚でありたいと思います。