4月公演「桂川連理柵」

自分でも意外なんですが、この心中ものは抵抗がありませんでした。きっと簑助さんの力が大きいのだと思いますが、お半ちゃんは心中の片割れとして一番感情移入しやすかったのです。
石部宿屋での長吉って「すごいキレ者」ですよね。普通あんなこと思いつかないですよね?なのに帯屋では洟を垂らしてる、この話の中で元も不可解な人物です。あんなにすごいことをひらめく長吉なら、下女に「どんなにお半が起こしても寝たふりしててくれないか」って頼んでたかもしれないな〜って思いました。しみじみ考えると長右衛門が死なねばならなかった一番大きな理由はこの「刀のすり替え」なわけで(他はなんとかなりそうでしょ?)、とんでもないヤツなんですよね>長吉。帯屋の長吉は勘緑さんらしい小技があちこちにあって目が離せません。もしかしてこの前の山伏みたいに毎回違うのかなあ、なんて思いながら観ていました。
逆にわかりやすいのがおとせ&儀兵衛親子。紋豊さんのおとせも簑二郎さんの儀兵衛もどうも憎めません。肩を叩いてるところなんか微笑ましいです。でもダメダメ親子!(笑)・・・しかし、どう見ても「できた人」の繁斎はなんでおとせと結婚したんでしょうね〜?全然釣り合わないんですけど(笑)。
このチャリ場の嶋さん、他の追随を許さないというのはこういうことを言うのかと思いました。地方公演の「堀川猿廻し」も軽快で素晴らしかったですが、是非後継者を育ててほしいです。宗助さんは最近、神がかり的に急上昇した気がするのですが(元々才能のある方がいい太夫さんと組んで花開いたというべきでしょうか)、次代はその宗助さんに太夫さんを育てていただけるのではないかと密かに、でも強く期待しています。

☆心中もの
「曽根崎」はきれいですが、いつも「お初は本当に徳兵衛を好きだったのかしら?」と思います。苦界にいる身でたまたま見えた光明が徳兵衛だったに過ぎないのでは?って。それは梅川・忠兵衛も同じです。その当時と今は違いますし、私に哀しい遊女の気持ちがわかるはずもないですが。「宵庚申」はあまり抵抗がありませんが、お千代の心理は理解しにくいです。「網島」の小春に至っては治兵衛に惚れる心理がわからん(笑)。小春はええ女やと思いますが。お染久松も「妹背門松」を観たら余計にお染が嫌いになりました。逆らえない立場の相手を自分のルールで振り回す美女、同性の友達おらんやろ、って思っちゃう(苦笑)
お半ちゃんはものごころついた時から長右衛門さんが大好きで大好きで、子供心に「お嫁さんになるんだ」って思ってたのかもしれません。それが娘らしい恋心に変わったころには大好きな人には奥さんがいた。しょうがない、諦めるしかない、でも諦められない、なんとか自分の思いを遂げたい・・・なんかすごくわかるんです。先に会っていたからと言って優先権があるわけではないけれど「私の長さまだったのに」って思っても無理はないと思います。離れているのならまだしも隣にいて毎日顔を合わすんですから。しかも親に「透かしたらして甘やかされて可愛がられて」育ったお半ちゃんに「我慢しなさい」は無理があります。ただただ好きだったんだよね〜、命を差し出しても手に入れたかったんだよね〜、って思ってしまいました。
もちろん、私がお絹さんだったらたまったもんじゃないですけどね。ものすご〜い敗北感で一気に何十年も老けそうです(苦笑)