4月公演「勧進帳」

録画で2回観ましたが「能の『安宅』の方がいいなあ」と思っていました。でも今回観た「勧進帳」はとてもよかったです。一番の理由は生ゆえに床の迫力を肌で感じられたからでしょう。とにかくすごかったです。1回目は幕見席で、2回目は床の間近で観ましたが、2回目はあまりの音量にぐわんぐわんと頭が揺れました。今、三味線さんにヨロめいていますので三味線7分くらいで聴いていましたが、弁慶・富樫の三味線2人の音が出色でした。こういうものはやっぱり「聴かす」音でやってほしいです。
人形ももちろん素晴らしかったです。勘十郎さんの弁慶は「勘十郎さんならここまでやってくれるだろう」という期待を裏切りませんでした。がっちり支えた左も芸術的とも言える足も、それぞれに達者でありながらぴったりと融合していて見事でした。
富樫もなんとも絶妙な存在でした。観る前は「富樫の本心がどうなのか知りたいと」思っていましたが、実際に観て得た結論は「そんなことどうでもいいや」でした。疑いつつ通したとしても信じて通したとしても、富樫は「ああするしかなかった」んだと納得できたからです。
それと義経。能でのシテは弁慶・ワキは富樫。義経は出番も存在も薄いのですが子方がやりますから”象徴的”な存在にもなりえます。「主役が誰であっても出番が少なくてもこの話は義経がいなければ成り立たない」という独特の存在です。文楽では他の登場人物と同じように人形遣いさんが遣いますから、どうしても中途半端に見えて「なんだかなあ」って思っていましたが、勘弥さんの義経は「子方の義経」のように見えました。弁慶は歌舞伎の「勧進帳」にしか見えませんでしたが義経は足の運びも能「安宅」に見えました。能好きの私にはポイント高いです(笑)。”動かない”美しさも大事です。
4人の部下たちも個性溢れていて存在感ありましたし(個人的に、首の遣い方は玉佳さんが抑えめながら情感溢れていて好きでした)、ツメさんもいいです。弁慶にひょうたんからお酒を注ぐツメさん。向かって右側はどなたでしょう?2回目に観たとき、弁慶に渡すまいと思い切り抵抗していたのがおかしかったです。ツメさん担当の太夫さんもがんばっていましたよね。「総力戦」で力に溢れていて「これが新しい世代の文楽だ!」という感じ、もう1回観たかった!