2月公演千秋楽2部・3部

今日の、というより全体の感想になりますが、簡単にメモっておきます。また思い出したら加筆します。

  • 「雪責」:奴さん、最初に観た頃よりずっと「寒そう」になってます。特に再度雪が降り出したあとはかなり寒そうですね。着つけで、襟が深めの奴@玉佳さんの方が普通にしていても寒そうです。今日は桐の谷さんが投げた打ちかけが奴@幸助さんの頭をかすり、奴さんが「ひーっ」という感じに頭を抱えたのが面白かったです。ふと桐の谷さんを見たら遣ってる方がもう少しで笑いそう、という顔でした。
  • 「壺坂」:沢市、目開きになってからの動きが違いますね。動きのキレがよくなってるだけでなく、首の動かし方とか話しているときの視線とか、微妙に違います。前半の沢市は「生きてるのに生きてない」みたいな感じだな、と思いました。それと沢市の後を追うお里。嘆き悲しみひとしきりくどいた後にはっと顔を上げて「ああ悔やむまい嘆くまい」というときに豹変してます。その水際立った思い切りのよさ潔さにはっとします。顔を上げたとき、お里の中には「死ぬ」ことは決定事情になってるんですね。心の中には「早く沢市さんのところへ行かなくては、あの世でも沢市さんの目になり手を引かねば」という思いしかない。まったく迷いがない。すごい女性だと思います。とても真似できません。ここまで惚れられたら男冥利につきますね。
  • 伏見稲荷」:今回は喜一朗さんの「弾きわける」という言葉を思い出して「狐忠信」はどんな音なの?と思いながら聴きました。最初に出てきて逸見の藤太をやっつけるところは結構がんがんがんっていう感じなので「普通の男性と同じなのかな」って思ったのですが、静と二人になると微妙な音色が入るんですね。不協和音って言ったら変ですけど。それが狐忠信のせいなのか、ストーリーそのもののせいなのかはわからないのですが「ああ、三味線に集中するっていうのもたまにはいいかな」って思いました。
  • 「河連法眼館」:3部は2回しか観なかったのですが、もう少し早めに2回目を入れればよかったと思いました。そうしたらここに「1回で終わらせないで」と書けたからです。初回はこの段の後半は勘十郎さんのマジックのような舞台に心を持っていかれてしまって、源九郎狐のくどきのところで床に集中できませんでした。でも今日は「どこでびっくり」なのかわかっているのでそれをワクワク楽しみつつ浄瑠璃もきっちり聴けました。で、泣きました。泣くとかいう生易しいものではなかったです。だってここ「親子愛」+「忠義」なんですよ。そこにいくまでもボロボロなんですが「中に儲けし我が子狐、不憫さ余って幾たびか〜〜我が親を慕ふ程、我が子も丁度このやうに、我を慕はふかと〜」のあたりになると息ができなくなります^^;
  • 「初音旅」:順番が逆になりましたが、やっぱり私はこの道行が大好きです。たまりません。景事好きなんですね、きっと。
  • 「中将姫」追記:昨日は岩根御前がぶっ叩き大サービスでした。それで思ったのは「このくらいめちゃめちゃに叩いた方が逆に現実味がなくて見ていられる」ってことでした。私は実母にですが、あんな風に髪の毛を持って引きずられて叩かれたり蹴られたりしたのであんまり写実的だと見ていられないんです、痛くて(笑)。だけど昨日はマンガみたいで「あれあれ、叩くわ叩くわ」って思って見ていられました。中将姫の「哀れ」感は薄れちゃいますけどね。
  • 実はこの公演で、一番印象に残ったのは千歳さんです。2部だけ何回も行ったというのが大きな要因だとは思いますが、本来の「中将姫」の前よりも代演だった「壺坂」の山の段が強く印象に残りました。千歳さんらしい迫力のある語りは残しながら、さぞかしお稽古されたのだろうなあ、と思える味わい深い部分がたくさんあり、何より簑助さんのお里にぴったりくる素直でまっすぐな語りでした。道行の呂勢さんもそうなんですが、このくらいの年代の方は下手に小細工をしないでご自分のよさ、持ち味を押し出した方がダイレクトに響いてきます。いきいきと語ってほしいです。なーんて、人形部応援団なのにちょっと床に浮気してみました^^;