改めまして「文楽太棹」

まず、私は人形から入りましたので「素浄瑠璃の会」は初めてです。CDはよく聴きますから素浄瑠璃そのものには慣れてはいたと思いますが、果たして1部「阿古屋琴責」の1時間以上の素浄瑠璃を、しかもあの大きな劇場の端っこの席できちんと聴けるものかと非常に不安でした。
ところがところが、端の席なので「観る」は半ば放棄して耳に全神経を集中して聴き入っているうちに、あっと言う間に終わってしまいました。聴き入るというよりは音が勝手に入ってくるんですけど。終わって出たひとことは「すごすぎる」。途中からは凛として空気を支配する、でもはんなりと美しい阿古屋の姿がチラチラと浮かび「女の鑑!」って声をかけたくなりました。3部「文楽好み」でお園が出てくるのですが、私はお園より阿古屋でいたいし(っつかお園より三勝の方が哀れだよねえ)、自分が男だったら阿古屋に惚れるわな、と思いました。カッコいいですよ、憧れます。
聴いている私でさえすっごく体力を消耗する素浄瑠璃でしたので、ご出演の皆さんはさぞかしたいへんでしたでしょう。始まる前は1部のあとに30分も休憩が?と思いましたが、出ずっぱりの清治さんのことを思えば納得できました。余談ですが、その休憩時間に玉女さんを目撃!舞台姿がステキだけど楽屋の浴衣姿もステキ、って思っていましたが、洋装もステキでした。なんで玉女さんっていつもあんなに”涼しげ”なんでしょうか。服装センスもいいし!
さて、2部「弥七の死」。これは不意打ちをくらったとしか言いようがありませんでした。淡々とした語り口にしんみりと聴き入っていましたが途中から「あ、まずいかも」という展開に。昨日は泣きポイントはないと思っていてハンカチをバッグに入れたままでしたので間に合わずボロボロっと服に涙が。。。「兄さん」と言いつつ思い出を語るところでは桶に浮かぶ真っ赤なトマトがありありと浮かびました。で、そのあとはずるずるに^^;
咲大夫さんの語りはいつもよりは抑え目で比較的淡々としていましたが、三味線が語る語る、音のひとつひとつが臓腑をえぐるようで、どうしていいのかわかりませんでした。激しい苦悩の渦が舞台を支配して胸に迫ります。もう、ここまでで体力的にも精神的にも限界でしたので、次の3部が軽快だったのがありがたかったです。
3部の最初の「三番叟」の曲、大好きなのです。ウキウキしながら聴きました。1部で琴・三味線・胡弓を見事に弾きこなした阿古屋、じゃなくて清二郎さんが一番近くにいらして「今日は清二郎さんデーだ」と思いつつずらりと並んだ三味線さんをうっとり眺めておりました。
「酒屋」「野崎村」と嶋さんの語りが心地よく、簑助さんのお園も花を添えましたが、皆さんさすが「今日は三味線が主役」とわかっていらっしゃるので出過ぎません。実るほどに謙虚、という気がしてちょっと感動しました。本当に素晴らしい公演だったと思います。最初に呂勢さんが口上をされましたが、あの呂勢さんの美声で語っていただいて、御贔屓に阿古屋を遣ってもらえたらいいな〜、いつか観たいなぁ、としみじみ思いました。
清治さん&ご出演の皆さん、ホントにありがとうございましたm(_)m