床山さんのこだわり

わたくしは、九月公演の主役「熊谷直実」が女房「相模」の首でございます。首だけではわからないと仰いますか?いえいえ、よくご覧くださいまし。

わたくしの髪にさした簪をよくよくご覧になればおわかりでしょう。そう、これは熊谷家の家紋「向い鳩」でございます。

文楽劇場床山さまが、わたくしへの思いをこめてお作り下さったものです。何も言わずとも衣裳を着ずとも「あなたは相模なのですよ」という心を込めて髪を結って下さっているのです。わたくしも精一杯、勤めたいと思います。
…ってこの首が言っている気がしました。人形に命を吹き込む人々の思いがひとつになる舞台、素晴らしいものでありますように。

ちなみに政岡だと「竹に雀」の伊達家の家紋の簪だそうですよ。