鑑賞記録・1部「堀川猿廻し」

  • おつるちゃん、5日から14日までにホントに三味線が上達していました。5日に観た時に後半ぎくしゃくして見えた部分が14日にはすっかり「三味線弾いて唄ってる」おつるちゃんでした。このブログにたぶん2回くらい書いていると思うのですが、5年前に玉誉さんの安徳帝を観て「この人の人形は品がいいなあ」って思ったのです。自然体というのかな、構えがゆったりしているからだと思います。5日のおつるちゃんはちょっと肩に力が入っていましたね。
  • 役替わりのおしゅん、1回ずつしか観ていないのでたまたまその日そう見えただけかもしれません、と先に書いておきます。簑二郎さんのおしゅんと勘彌さんのおしゅんはまったく別の人に見えました。とにかく雰囲気からして全然違うんですが(幽体と実質の違い?)、一番大きな違いは猿廻しを観ているときです。正確に言うと簑二郎おしゅんは観てません。暖簾の方に向けてうつむいています。既にもう魂が抜けちゃってるというか、目の前のことを正視できない弱い女性です。そうすると伝兵衛さんが「頼れる強い人」に見えます。勘彌おしゅんは視線こそ上げないものの耐えながらちゃんと前を向いています。強いです。これだと伝兵衛さんはひ弱な二枚目に見えます。この段だけではおしゅんや伝兵衛がどういう人なのかはわかりませんから、どう見えてもおかしくないわけですが、人形によって話も違って感じられるのが面白いとも思います。
  • 勘十郎さんの与次郎はおバカさんじゃないのがいいです。私はこの与次郎が好きです。あまりチャリチャリしていると物語から哀しみが薄れてしまうので「いいお兄さん」的な方が深みがあっていいですよね。
  • さてこの猿廻しの段、5日は源大夫さんが途中で退場されて津駒さんが入られるというアクシデントがありました。私は何度も書いているように源さんが大好きなので「ぎょえええ」と思って集中力が切れかかりましたが、つこたんも好きなので楽しめました。でも泣けなかったんです。ところが14日、源さんが語った時には泣けたんですよね・・・。ここで「泣く」っていうのは「自分でも予想外に泣く」なんです。楽しく観ているのにつつーっと涙が出て「あれ?」と思う。席が床を聴くのにいい位置だったからかもしれませんが、やっぱり源さんの語りが自分に合うんだなあって改めて思いました。