上方芸能を読んで思ったこと

たまたま特集が「大衆演劇」だからだと思うのですが、こういう面白そうなものがこんなにたくさんあったら文楽を選ばない人がいても無理はないな〜と思ってしまいました。思っちゃいかんのでしょうが(苦笑)。私が住んでいるのは神奈川県ですが、東京が近すぎるせいか、あちこちにあった小さな劇場がどんどんたたまれました。私の小さい頃は寄席とかストリップ劇場(←これは芸能とは言えないでしょうが^^;芝居小屋みたいに使われたりもしてたので)とか、フツーにあったのに、今は黄金町〜日ノ出町さえ特徴のない町になりつつあります。でもその東京にも、空気の違う町はもう、そんなにないのかもしれません。


「能と文楽」という論文があって面白く読ませてもらったのですが、「能が上方芸能なのか」というところで少しひっかかってしばらく考えていました。それが「形をなした」土地を指すのであれば、京都奈良という感じでしょう。そして、猿楽のもっと前のものを考えるのであればさらに西方が生国であるとも思えます。でも、江戸時代には能は武家の式楽でした。幕府解体の後に放り出された能楽師たちの中で関西へ戻れたのは身分を保証された者であり(宗家とか)、他の多くの能楽師は江戸(東京)の地で身分も仕事もない中で死に物狂いで芸能を残そうとがんばってきたのです。今、東京の地に多くの能楽師の流儀が残っているのはそのときの死闘の結果であることを考えあわせれば「上方芸能」と呼ばれるのには抵抗があります。能楽師たちが首都になった東京を求めて来たわけではなく、そこに放り出され、そこで生きていくことを選んだのです。
そもそも能も文楽も「世界無形遺産」に選ばれた芸能なのですから「日本の芸能」でいいのではありませんか。