「本朝廿四孝」十種香&奥庭狐火

  • [十種香の段]ところは謙信の館。中央には思案顔の簑作(実は勝頼)、上手には「亡き許婚・勝頼」の絵像の前で回向する八重垣姫、そして下手には盲勝頼を偲んで念仏を手向ける濡衣。濡衣は亡き恋人に似た簑作にみとれ、また、ふと隣の間を覗き見た八重垣姫も勝頼の絵像にそっくりの簑作に心奪われます。見れば見るほど似ている姿に耐えられずひと間を飛び出して簑作にすがりつく姫。人違いと取り合わない簑作ですが、思い遂げられずばと自害を図る姫の姿にうたれて勝頼であると明かすのでした。そこへ謙信が現れて簑作を塩尻へ使者としてたたせ、その跡を家来に追わせます。姫が不審に思って尋ねると簑作は追手に討たせると答える父謙信。助けてほしいと頼みますが聞き入れてはもらえません。
  • [奥庭狐火の段]場面は奥庭。父謙信の計略を知り、なんとかそれを勝頼に知らせたいと悩む姫。自分の足で追いつくはずもなく、諏訪湖を船で渡れば近道ですが氷が張っていて船も出せません。残るは神頼みと諏訪法性の兜に祈りを捧げ、兜の妖しい気配を感じて手に持ってみると、水に映る自分の姿が狐であることに気付きます。兜を隠せば元の姿になり、持てばまた狐の姿になることにびっくりする姫ですが、これは神のご加護に違いない、狐となって湖の氷の上を渡っていこうと決意するのでした。狐火に守られて姫は勝頼の元へ駆け出します。