改めまして鑑賞記録など

実家の父が急に入院したそうで今後どうなるかわからないので、今日中に昨日の感想を書いてしまいます。単に耐用年数がきているだけでたいしたことはなさそうなのですが。
今月は「玉女さんガンバレ月間」ってことで(笑)。もちろんご贔屓もちゃんと観ますです。夜の部でツメさんを遣われているようなのですが、どこだかわかりませ〜ん。

  • 昼の部〜住吉鳥居前:ここって去年の夏は出遣いだったと思うのですが、これだけ人数が出るとやっぱり顔が見えない方が集中できていいですね。黒衣推進派(笑)。しかし、たった2回しか観ていないというのに遣う人によってこんなに印象が違うのかと思ったのは団七。いろいろご意見や好みもありましょうが、私は今回の勘十郎さんの団七の方がしっくり来ます。団七って三婦や徳兵衛ほどスコンと抜けた男じゃないと思うんですよね。見た目と違って繊細なんじゃないかな、って思うんです。最初の出からして何かを引きずっているような団七は、去年観た玉女さんの野太い団七とは全然別の人に見えました。
  • 内本町道具屋:ここは磯さんが主役のようなものなので♪一生懸命観ました。でも一生懸命観たのは磯さんだけだったのでかえって感想が書けないのでした(恥)。面白いと思ったのは、玉女さんの団七だとすごく小さく見えてしまう磯之丞が、今回は団七といいバランスに映ったことです。理由は違えども両者とも堺を追われた身だというつながりがあるように見えました。これは観ている私の側の心理かもしれませんけれど。
  • 道行妹背走書:やっぱり「これ、なくていいのに」と思ってしまいました。そりゃ〜伝八が悪いっちゃ悪いですよ、身から出た錆ってやつです。でもこんな死に方カワイソすぎます。しかもここでも何気に磯さんはノータッチだというのが(笑)。
  • 釣船三婦内:ここも前半は痴話げんかを観ておりました。派手なケンカしてましたね〜。琴浦さんもっと怒っていいぞ、と思ったりして。お辰が出てきて鉄火ぶりをみせるので有名な段ですが、私がここで一番好きなのは三婦が2人をねじ上げて引きずって行く場面なんです。今回の三婦はなんと紋寿さん!私はとにかくこの三婦が大好きで、実は内心「あの線の細い女性を遣うことの多い紋寿さんで大丈夫なの?」と思ったりもしました。でもすごくはまってましたね。おとなしくしている場面と暴れる場面のメリハリがよかったです。
  • 長町裏:去年ここを観て「やっぱりこういう場面はヤだ」って思って、今回も観るのに腰が引けていたのです。でも不思議なことに今回はすんなりと観れました。それは「住吉鳥居前」のところ書いたように団七の葛藤がつぶさに出ていたからだと思います。綱さんの語りも影のある団七によく合っていました。それと好対照に義平次が軽快。この語りはちょっと伊達さん以外には出来ないでしょう。玉也さんの人形もぴったり沿うようでした。太夫さんはよく「舞台は見ません」と仰いますが、伊達さんはチラチラと気を配っておられて、これがきっと日を重ねるごとに伊達さんは語りだけに集中するようになってもっともっとしっくりくるのだろうなあ、って思いました。この段を観るだけでも毎日通いたいくらいです。
  • 田島町団七内:録画では屋根の上の場面が印象的でしたが、今回ナマで観て家の中でのやりとりもすっかり把握できました。ここの主役は徳兵衛ではないか?と思えてしまうほど徳兵衛は男前で団七はうじうじと情けないです。だからこの段はあまり出ないんじゃないのかしらと思うほど。同じ雪駄を用意していざとなったら身代わりになろうという徳兵衛の男気に落涙必至。息子たちを「自分のために仲間を売るようなみっともない真似だけはしてくれるな」と言って育てたという(ホントの話です^^;)任侠ものに弱い私にはツボ中のツボ。この徳兵衛を遣るのはやっぱり文吾さんか玉女さんでしょう。他に考えられません。・・・徳兵衛がお梶を口説く(ふりですが)ところでは「こんなに直截的なこと言うんかい」と思わず「ぽ」ってなりません?
  • 夜の部〜加茂堤:舞台を観るのは初めてですが、築地までの初段は録画で3〜4回観ているので初見という気がしませんでした。実際に観るとやっぱり梅王丸・松王丸・桜丸は全然似ていなくて(しつこい?)、これはもう「性根の差なのだ」と思い込むしかないと実感しました。梅王さんはやっぱり長男っぽいですね。ちょっと残念だったのは牛を引くところがあまりにコミカルで自分のイメージと合わなかったことです。録画で観た八重はもっと必死で牛を引いていた感がありましたので。
  • 筆法伝授:ここはもう全身全霊で「玉女さんがんばれ」って思っていたので、あまり他のことに気が行きませんでした。これから手の内にしていく役を「玉男さんのイメージ」を下地にして観られる辛さって想像を絶するものがあると思います。口さがない人も世の中にはたくさんいますし、どうかプレッシャーに負けないで!とひたすら祈るばかり。足がちょっとフラフラしていた気がします。この場面は足が目立つので足遣いさんがんばって玉女さんを支えてあげて!
  • 築地:この段、とても好きで楽しみにしていました。短いですがドラマティックな段だと思います。失意のうちにあるはずの菅公が諦観したように泰然としている姿に打たれます。梅王も源蔵もいいのですが、戸浪もカッコいいんですよね。
  • 杖折檻:文雀さんが出てきてくださっただけで感動。前日に「楽しむ会」でまだ足元が覚束ないけれど「痛みはなくなった」という話を聞いて思わずウルウルっとしました。自分自身も膝に病気がありますが、母が重いリウマチであちこち人工関節、痛みに苦しむ姿を見ているだけに「痛みがない」というのはわがことのように嬉しいのです。どうか大事になさってくださいね・・・って全然感想になってませんね^^;ここは娘を折檻する母覚寿の方が折檻される方よりもはるかに痛みを感じているのが観ていて辛いです。あ!そうそう、ひとつ違和感がありました。贔屓にしている人形さんが出てきたときに拍手する気持ちは理解できるのですが、話が流れているさなかにそろそろと出てくる宿禰太郎に拍手っていうのはどうなんでしょう?私は浄瑠璃に聴き入っていたので「え?」と思いました。
  • 東天紅:ここはまあ、観たとおりの段でした。女を(しかも自分の妻を)後ろから袈裟懸けに斬るってホントにひどい話なんですが、立田がこんな男のどこに惚れたのか知りたいです。何故コケコッコが鳴くのかは「らくらく文楽」のおりんさんが解明して8月17日の日記に書いてくださっていますのでご参照ください。
  • 丞相名残:二段目は全体的に難しくて録画を観て予習しておいてよかったとしみじみ思うのですが、特にこの段は木像の丞相と生身の丞相とが交互に出ますので、ちゃんと話を把握してから観た方がぜーーーーったいにいいと思います。玉女さんは大健闘で、生身の(紫の衣裳の)丞相の方に体温を感じさせることに成功していたと思います。生身の丞相はほうとため息の出るような気高さがありました。日を重ねたらもっとよくなると思います。期待しています。


そうだ!初心者の私は昨日初めて気がついたのですが「長町裏」で太夫さんがつけている裃の柄と団七の衣裳の柄が同じなんですね。芸が細かい!