伝統芸能を守り続ける

今日、狂言の会で東次郎さんのお話を聴いているときに「デジャヴ?」と思ったことがありました。最近どこかで似た話を聞いたぞ、と。東次郎さんはとても早口でちゃんと覚えていませんが、こんなことを仰っていました。
「自分の好きなように演じるとそれは自分の感じ方を表現することになってしまいます。でも我を抑えて決まった型どおりに演じることで、どなたの心の中にも『ああ自分もそうだ』という思いが生まれるのではないかと思います。そして演じる側は皆さんにそう思っていただかなくてはなりません。そのために決められた形でお見せするのです。同じものを観ていても自分と隣の人とでは全然違う受け取り方をしているかもしれませんね」
そうです。これは地方公演の解説で津駒大夫さんが仰ったこととまったく同じ内容なのです。狂言文楽、ジャンルは違っても伝統芸能を守っていこうと思う人の心には同じ思いがあるのだと奇妙な感動に満たされて帰ってきました。私は伝統芸能そのものよりも、それを守っていこうとする人たちの放つ輝きに魅せられ、心底まいっているのかもしれません。