ひまわり文楽(2/26・上大岡)

今朝起きて最初に思ったのは「文楽」じゃなくて「勘緑座公演」っていう感じだなぁ、と。その方が雰囲気出ますよね(笑)。昔ながらの芝居小屋の雰囲気を出しながら、スモ−クや照明テクも駆使しての舞台で、企画した人たちがどれだけ一生懸命、しかもワクワクしながら決めていったのかを想像すると思わずこっちもにま〜っとしてしまいます。音響もよくて広さもちょうどよくて、すごくいい舞台でした。空席があったのがもったいない!さてそれではだらレポを。

  • 最初は後ろに鏡板の松を配しての二人三番叟。勘緑さんと一輔さん。普通の二人三番叟より長くて、客席の方まで来てくださって、間近に観ることができました。実はチケットを買うときに受付の人に「どの席がいいでしょう?」って聞いたのですね。かなり最初の頃に求めましたので「どこでもお好きなお席を」と言われたからなのです。少し普通のホールとは感じが違うのでご覧になりますか?と聞かれたのですがそこまでしてもらうのも悪いので、お勧め席を聞いたわけです。前の5列は低い位置で、6列目から高い段になるからそこがいいのでは?と勧めていただいたので6列目の真ん中2席を求めました。したらば4列目と5列目の間の広い通路を三番叟が通ってくれたのです。人形がちょうど目の高さ!うわお!舞台も全体がちょうど視界に入る距離で受付のおねえさん、ありがとう!っていう感じでした。
  • 相子大夫さん・団吾さん・勘緑さん(&玉佳さん・紋吉さん)による三業の解説、勘緑さんによる作品の解説があり、20分の休憩。幕がないので舞台の設置の様子を見ることができます。ロビーではお茶のサービス。く〜っ!アットホームでいいなあ。休憩時間に知人と挨拶・歓談。そうしている間に客席内にはスモークが・・・
  • 「化身恋終焉」の開始。よく知られている道成寺の話は清姫は大蛇になって鐘の中の安珍を焼き殺して自分も死んでしまうという話ですが、勘緑さんはそういうの、嫌いだそうで(!)、大蛇が鐘に巻きついて火を吐くところまでは同じですが、僧は法力で鐘から出てきて大蛇(←ホントの大蛇ではなくて「邪悪なるもの」だそう)を退治してあい討ち状態になりました。倒れた僧に清姫がすがり付いて泣くところで終わります。
  • 舞台の話からはそれますが私も常々、能を観ながら「蛇となりて」という部分がひっかかっていまして、「道成寺」を観るたびに深く考え込んでしまうのです。邪悪なものが激しいエネルギーとなって放出される(もしくは内包されて高エネルギー核を形成する)ということを、姿かたちを蛇にすることで表現していると思うのですが、その邪悪なものが初めからすべてその人の心に棲んでいたのか、それとも心が歪んだときにその隙間に入り込むものなのか、そんなことを考えていました。勘緑さんはその後者の捉え方をなさっているようで、清姫の心の隙間に邪悪が入り込んだ、だから僧の法力によってそれを滅したときに元の姫に戻る、と。う〜ん、これってもしかして私が求めていた形に近いんじゃないの?ってちょっと感激。勘緑さんにお話をうかがってみたいな〜と思ったり。。。
  • 最初、杖で戦っていた僧が蛇に咬まれて瀕死の状態になって熊野権現の数珠を出して退治するのですが、これってよくあるパターンですよね。入鹿誅伐で宙に浮く首がいくら刀で叩いても落ちないのに淡海が印を結ぶとパタっと落ちましたし、私が思い出したのは能「船弁慶」で知盛の霊に義経が刀で対抗しようとすると弁慶がそれを制して数珠取り出してさらさらと、という場面です。何故かと言うと浄瑠璃に、能でよく出てくる「北方に軍荼利夜叉明王〜」っていう節が出てきたからなのですが。(一緒に呟いてしまったワタシ^^;)
  • 蛇くん、顔の大きさの割に寸が短くてちょっと可愛かったです。でも上手に動かしていましたね。どなたが遣ってらしたんでしょうね。照明が凝っていてコマ送りみたいに見えるんですが、キラキラギラギラと光ってうねって、ワクワクしました。ポカンと口を開いて観ている自分に気付き「ワシってコドモみたいかも」と恥ずかしくもなりました。
  • 夜中に清姫が寝所へ忍んで行くところで、障子に影が映るように人形を動かす場面があるのですが、それが切り絵みたいでとてもきれいでした。下手側の席や上手でも前の方の席の人には見えなかったのではないかと思って、それがちょっと残念でしたね。人形のかしらって能の面と同じで「光と影」で表現するものだと思ってはいましたが、こういう「光と影」の使い方もありなのだと思って少なからず感動しました。伝統を守り抜くことと、何でもありで常にできることを開拓していくことって、両立できるものなのかもしれません。
  • 最後になってしまいましたが、ご贔屓さまの清姫の美しいこと美しいこと。一緒に行った友達の言葉を借りれば「髪振り乱して邪悪なものに駆られている段階でも清らかに見えた」そうで、やはりその辺、清姫の中に邪悪なものが棲んでいたのではなくてとりつかれたということなのかな、と思いました。黒衣姿だったのでお人形に集中できてよかったです。いつも黒衣姿で遣ってくださるとありがたいです。(←邪心ありすぎでしょ〜)
  • 終演後に皆さん、お顔を出してずらりと並ばれました。どなたが何をやっていらしたのかわかりませんが、皆さん清清しいお顔でした。玉佳さんが船頭さんだと思いますが、他はちょっとわからないですね。清之助さんもニコニコと嬉しそうにしていらして観ているこちらも嬉しくなりました。遣うのが清姫でも蛇でもツメ人形でも、清之助さんはきっとこういう顔をなさるだろうと思いますが。