3部「妹背山」3回目〜2/21

さすがにもうあんまり書くことがないので、人形さんのことを濃く。

  • 中日に鱶七が勘十郎さんから玉女さんにバトンタッチされ、鱶七@玉女バージョンを拝見。おりょ〜、こんなに違うんだ、と改めて実感。どちらが上手いとかいいとかじゃなくて、人形遣いさんってこれだけ個性があるんだ!といういい意味での驚きだった。ひとことで言うと勘十郎さんの人形は華やかでしなやかで振りが大きくて初心者でもわかりやすい。対して玉女さんの人形は出てきたときに大きさ重さを感じるが、極端に動きを制限していてよく観ていないと何を表現しているかつかみにくい。これって狂言和泉流大蔵流の違いみたい。
  • 姫戻りでの橘姫の心理をちょっと考えてみた。道行でお三輪に会う前には世の中にこんなに感情をむき出しにして「私のものったら私のもの!」と言う女がいるとは思いもよらなかっただろう。だって姫さまだもん、そんなことはしたないし、しちゃいけないし。でもお三輪にあって「これではまずいんじゃないか」って思ったはず。負けちゃう〜!って。しかも自分には「敵の妹」という大きなハンデがあるし。姫戻りで彼女が求馬の望みを聞きいれるのは「天子のため」もあろうけど、お三輪との出会いが大きく影響していると思う。だって16の娘よ〜、天子より恋人でしょ、やっぱり。どんなことをしてでも他の人に渡したくなんかない!って思ったんじゃないかなあ。兄を裏切る後ろめたさを振り切るために「天子」を出したのでは?
  • さてその姫戻り、最初に行ったときより床が重くためが利いていた。おお!これこれ、これだ、と嬉しくなる。床が重いと人形もゆったり動けて、2人の心理が大きな波を作る。この段取りはお三輪のために出来ているとは言え、つなぎの部分をさらっとやりすぎては全体に平坦になってしまうので、このくらい押してもいいと思う。
  • 今回、妙なところで笑ってる人がいなかった>金殿の段。豆腐の御用はやんややんやという感じだったのできちんと聴いてちゃんと観ている人が多かったのではないかと思う。
  • 玄上太郎がいいんですけど〜。動きといい間合いといい、周りを壊さないのに存在感がある。出るときと引くときの切り替えが上手なのかな。

この3部、楽にまた観ます。また金殿で嶋さんに泣かされるんでしょうか。個人的見解ですがお三輪は幸せに死んでいったと思ってます。最愛の人、でも自分には決して届かない人、だけど命を投げ出すことで愛する人が本懐を遂げる礎になれる、それだけでもう十分だと心底思ったと思います。ただ、心残りなのはもうひと目会いたかった、ということ。でも「ああ、会いたい」という激しく切ない思いの中、意識の中でお三輪は求馬の腕に抱かれていたと思うのです。