視聴室

初めて納得できる「心中もの」を見た気がします。私、この心中は理解できます。今まで「自分が女だったら絶対に死なない、こんな男のために死ねない」と思う心中ばかりでしたが、千代なら、この夫のためなら死ぬかもしれません。

  • 「心中宵庚申」
    • 上田村の段

この段で姉を遣っているのが清十郎さんだったので、この回(昭和57年2月)の「宵庚申」にしました。でも主遣いも黒衣でした。
女のお人形さんがよく見せる「縫い物」の場面がありましたが「上手い!」と声に出ました。師匠、あなたには誰もかないません!今まで何度か色々な人で観て「何もないのに上手に見せるな〜」と感心していましたけど、清十郎師匠は異常に上手いんですよ。何が上手いって大げさじゃなくて自然。一連の動きが「見せよう」としているのでなく本当に縫い物をしたくてしているように見えるんです。手の動かし方、首の動き、ほんまもんの「LivingDoll」です。しみじみナマで観たかったです。
お父さんがお千代を庇うように「なんべん去られても」みたいに言う場面は泣けました。ダンナさんが迎えに来たら、今にも死にそうなお父さんを置いて行っちゃうんだね〜、とやや複雑でしたけど。

    • 八百屋の段

姑がハンパじゃない、すご〜く憎たらしい、でもすごく人間くさい。。。私は舅の方に腹が立ちました。あんたがそんなだから女房が嫁いびりすんだろ〜が!って。一見いい人みたいなので余計にムカつきました。話にのめり込みすぎて人形の細かい動きまで観察できなかったです(苦笑)。

    • 道行思ひの短夜

これ、24年前なんですけどね、庚申参りの2人が玉女さんと勘十郎さん(当時の蓑太郎さん)なんです。今でもええ男やけど、若い玉女さんめっちゃイケメンやん!いつもテーブル越しに見てるんですけど思わず立ち上がって画面に食い入りましたよ〜。「え〜、うそ〜」とか娘っ子みたいに独りごとを言ってました、はい(苦笑)。
あ、いけない、心中場面について書いてないですね。元武士だということなのか切腹して自害するんですよね、相手を切るのも潔くばっさり。汚くない心中場面だなぁ、と思いました。とは言え、死ぬ場面は気持ちよくないですけど。