命を引き継ぐ

最近になって文楽を観始めたので、どうしても今の世代の方を見聞きするのが先になる。最近は録画で遡って観て「あ、似ている」と思うことがよくある。
前にも「初めてお名前とお顔を覚えたのは玉女さん」と書いたが、それは玉女さんがイケメンだからだというわけではなくて(もちろんそれもあるけど)、人形を遣っておられるときにふわっと笑みを浮かべられるのが印象的だったからなのだ。いやらしくないけれど色気があって、はっとひきつけられるような自然な笑み。最近になってそれは玉男師匠から受け継いだものだったのかと知った。
昨日は呂大夫さんの表情を観て語りを聴いているうちに、呂勢大夫さんがかさなった。ああ、呂勢さんのあの雰囲気はこの方から受け継いだものだったのか、としみじみ。清之助さんだって、初めの頃は「蓑助師匠の弟子なのに何故似てないんだ」と不思議だったのだが、子供の頃から仕込まれた清十郎さんに似ているのだとわかって納得できたし、皆、師匠に似るんだなあ、と。
人間の命には限りがあるけれど、こうやって芸と芸にこめられた魂とは次の命へ引き継がれていくのだ。そう思ったらまたぼろぼろ泣けてきて、私の世代の皆さんが一日も長く舞台をお勤めになれるように、そしてまた次の世代へとしっかり継承してくださるように、絶えることなく未来永劫続いていくように、と祈らないではいられなくなった。そういう伝統芸能での姿勢が、世の中のすべての人に浸透すれば日本のよさも失われないのではないかしら。