ディレクターズカット

公開される映画は編集者によって編集された作品なのですが、DVDが出るときに”ディレクターズカット”というのが出ることがあり、著名な監督だったりすると”ディレクターズカット編”として公開されたりもします。でも私はいまだかつて監督が編集した作品の方が面白い、というのに出会ったことがありません。多くは冗長で「くどい」。自分だけが鋭敏な感覚の持ち主だと思いこんでいて観る側を信じてないんだろうな〜・・・一を聴いて十を知るという言葉があるのに。


今回、原作に忠実に作られたという触れ込みの(ごめんなさい、私はあまり経緯を詳しく知らないのでいい加減なこと言ってるかも)杉本版「曽根崎心中」を観て、そういうことを考えてしまったのでした。そもそも「曽根崎心中」を面白いと思ったことはないんですが、それでも現行のものはまだ余韻があります。今回のは余白とか余韻とかぶっとんでる気がしました。


それと、これは私の超個人的な感想〜〜〜観音廻りがあるためか、最初から「お初は死にたい子なのね」という印象が強いです。心中に憧れて(不幸な、でもいい男とやむにやまれぬ事情で死ぬしかないの、悲劇のヒロインなの、という状況に?)死に場を探していて、絶好の状況に陥って思い通りに好きな男の手にかかって死んでいくお初の物語。そんな風に感じてしまったのでした。松之輔さんは余計な部分を取っ払うことで物語に余韻と情を残したんじゃないでしょうか。
観音廻りは読んでいて面白いと感じましたが、手を合わせるお初の映像には自己陶酔というか、思い込みの激しい女性を感じて、正直怖かったです。心中に酔える人には面白い作品なんでしょうね。