簑助さん

人間国宝ふたり」の中に、亡くなられた呂大夫さんを見送る場面がありました。そのとき手を合わせる簑助さんの身体から発せられる空気にはっとしました。この人は心から悼んでいる、と思いました。

今だから正直に書きますが、最初に見た簑助さんの人形は忠兵衛で、どうにもピンときませんでした。名人と聞いていたから余計に納得できなかったのだと思います。

最近になって「もしかしたら簑助さんという人は可愛らしい(ごめんなさい!)見かけよりずっと男らしい人なんじゃないか、情が深くて男気があって曲がったことが嫌いで、忠兵衛みたいな部分は持ち合わせていないんじゃないか」と思うようになりました。

とにかく、お里は簑助さんがいいです(笑)。物語の解釈がどうなのかは知りませんが、しっかり者で「私が一緒に行ってあげないと」と後を追う理が勝ったお里より「早く沢市さんのとこに行かなくちゃ」って後を追う情が勝ったお里が私は大好きです。