出会いのタイミング

文楽に出合ってまだ、日が浅いです。生まれた家が観劇をするような家でなく、映画もダメだという風に育てられ、結婚・出産・老人の世話と続いて、最近やっと観れる環境を得たからです。ですから能狂言もまだ数年のお付き合いです。今朝、しみじみとそれを思ってふと、昔の片思いのことを思い出しました。
まだ大学生になったばかりの頃、好きな人ができましたが、その人には既に一緒に住んでいる女性がいました(結婚はしていませんでしたが)。彼女もとてもいい人で、それまで彼を支えてきた人から奪おうとか、そんなことは微塵も思いませんでしたが、やっぱりちょっと悲しくて彼の友達にポロっともらしたことがありました。
そのとき「○○はキミのことを嫌いじゃないよ、むしろ好きなんじゃないかな。あいつは『出会いのタイミングの問題だ』って言ってたよ」と聞いて、まだお子ちゃまだった私にもなんだかわかるような気がしたのでした。
人への思いはそのまま持ち続けたらストーカーになりかねませんが(笑)芸能への思いはたとえ出遅れても持ち続けることが出来ます。たとえ出会いのタイミングが遅くても諦めることなく、深く愛することは出来ます。1対1ではないから。そうやって能や狂言への愛と理解を深めてきて、今年また文楽に出合って世界はひろがっていきます。深く、そして広く。
芸能は誰のものにもならない、すべての人のもの。たくさんの先輩にいろいろ教えてもらって、自分でも一生懸命勉強してこの愛情をより深くしていきたい、命の尽きるその日まで。まるで人生そのもののようだと、ふと今朝、思ったのでした。


今日は千秋楽ですね。千秋楽って雅楽の曲なんですよね。能「高砂」の最後にも出てきます。もっともっと勉強することは山ほどありそうです。どうか技芸員の皆さまがお元気で一日も長く舞台をおつとめになれますようにと祈る日々。
今日も素晴らしい舞台でありますように。